講師 大門 剛明(作家)
「推理作家大門剛明氏からみた養護教諭の世界」
◇講師プロフィール
1974年三重県生まれ。龍谷大学文学部卒業。
2009年『雪冤』で第29回横溝正史ミステリ大賞とテレビ東京賞をダブル受賞し作家デビュー。死刑制度と冤罪に真正面から挑んだ社会派ミステリ。以降次々と新作を発表し、社会派ミステリの新星として注目を浴びる。『婚活探偵』『完全無罪』『不協和音』『正義の天秤』『シリウスの反証』など、著作多数。映像化された作品も多く、現在、ドラマ『両刃の斧』がWOWWOWにて配信中。
『この歌をあなたへ』では、加害者家族に起きる苦悩や社会的差別がテーマ。主人公の小学校養護教諭宮坂蒼衣は採用７年目。彼女の勤務する学校に臨時の事務職員が配属される。彼女の目を通して、加害者家族への偏見や理不尽な扱いを描いている。一方で、養護教諭の描き方に注目したい。小さな切り傷で来た1年生の女の子に対して蒼衣はしゃがんで目線を合わせ「切っちゃったので手当てしてください、だね」と自ら伝えられるよう仕向ける。絆創膏を貼ってあげると笑顔で教室に戻る姿に、「あの子はかまってほしくて来ているのだ。下の弟が生まれたばかりだと担任から聞いている」と対応を振り返る。いじめへの対応、若い担任との連携など一つひとつが養護教諭の目線で描かれている。