学会長挨拶

第32回学術集会学会長 松永 恵(茨城キリスト教大学)

 おかげさまで本年12月に、茨城県日立市にて第32回学術集会を開催する運びとなりました。多くの方々にお力添えいただき、ここまでこぎつけることができましたこと、感謝申し上げます。

 一般社団法人日本養護教諭教育学会は一昨年、設立30周年を迎えました。これまでに多くの論文が公表されてきただけでなく、用語集は3版を重ね、さらに養護教諭の倫理綱領、実践基準の検討がなされるなど目覚ましい発展を遂げ、養護教諭の資質向上と力量形成に寄与しています。
 現在では、公表されてきた多くの知見をもとに、養成段階から質の高い教育が行われ、卒業後も段階に応じた研修が計画されています。それでも、保健室で日々、多様な健康課題を抱える児童生徒ひとりひとりに対応する中で、ジレンマを感じることは少なくないのではないでしょうか。今後も引き続き「こどもの心身の健康の保持と増進によって、発育・発達の支援を行うすべての教育活動」を振り返り、養護教諭の独自性を解明し、養護教諭同士、そして多職種で共有していく必要があります。
 そこで本学術集会では、本会の原点といえる「実践」に視点を据え、参加者が日々の経験を振り返り、ジレンマの意味を問い直し、これまでの知見と往還させながら、実践の意味や価値を見出していきたいと思います。同時に、日々の実践についての疑問を共有し、今後の研究課題を明確にし、養護の「知」を創造していく契機にしたいと考えています。

 1日目の特別講演では、日々感じるジレンマの「省察(=振り返り)」について、D.ショーン「省察的実践とは何か」を翻訳なさった昭和大学認定看護師教育センター 三輪建二先生にわかりやすく教えていただきます。また、同日行うシンポジウムでは、多くの方がジレンマを感じたことがあると思われる「保健室に来室した子どもを教室に帰す」場面に着目したいと思います。
 2日目には一般口演やポスター発表を予定しております。続くランチョンセミナーでは、医療が発達し発作に接することが少なくなりつつあるてんかんについて、また、思春期にがんを抱えながら生活する子どもたちへの支援について学ぶことができます。午後のワークショップでは、大学教員だけでなく現職養護教諭からも、多職種連携に必要な能力の育成について意見をお聞きするセッションと、保健室におけるICTを体験するセッションを用意しています。
 本学は「駅前大学」で、品川からJRを利用し2時間前後、車では日立南ICから10分と交通の便がよいです。また、託児も受け付けますので、一般口演やポスター発表も安心して申し込むことができます。
 日々の経験から共通の「知」を導きだし、養護教諭の共有財産にすることを目指し、オンラインも含めて皆様で集い、ひとりでは取り組みづらい「省察」に、一緒に取り組んでみませんか。

2024年6月28日

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